滋賀・豊郷小 新校舎の建設費支出「無効」

町長のリコールに発展した滋賀県豊郷町立豊郷小学校の校舎保存問題で、
町民が町を相手取り、旧校舎の隣に建てた新校舎の建設費差し止めを求めた訴訟が
今月13日、最高裁で確定した。
判決は町民側全面勝訴の内容。
最高裁は、大野和三郎前町長が裁量権を逸脱し強引に建設に着手したと判断した。
が、新校舎は3年前に完成し建設費18億円を支払い済み。
町民側は「税金を無駄に支出した」として
大野前町長らに建設費の返還を求める損害賠償訴訟で責任を問う構えで、
7年に及ぶ騒動は新局面に入った。(文化部 戸津井康之)

サンケイ新聞 (2007/04/20 13:16)


原告、前町長らに返還請求へ

同小学校は昭和12年に建設。著名な米国人建築家、ヴォーリズ氏が設計し、
県を代表する建築物として親しまれてきた。
しかし平成13年、大野前町長は「老朽化し耐震上問題がある」と
校舎取り壊しと新校舎建設を発表。
反対する町民が「豊郷小学校の歴史と未来を考える会」を結成し保存運動を始めた。

新校舎建設をめぐっては、入札談合疑惑が浮上したほか、
旧校舎の耐震調査を請け負った設計会社が耐震データを改竄(かいざん)し、
「倒壊の危険がある」と虚偽の報告をしていたことも判明。
日本建築学会が「簡単な補修で十分使用できる」と町や県に保存を要請するなど、
保存運動は全国規模に広がった。

そして争いの場は法廷へ。
大津地裁が平成14年、「解体されれば町に回復困難な損害が生じるおそれがある」
と工事差し止めの仮処分命令を下す。
しかし、町側が地裁命令を無視し校舎解体に着手したため、
県警が建造物損壊罪で捜査に乗り出す事態へと発展した。
一方でリコールが成立し大野前町長は失職したが、次の町長選で復帰。
今度は「旧校舎は保存するが校舎として使わず、新校舎を建設する」
という計画案を一方的に発表した。

「新校舎建設ありきで強引に進める町行政はおかしい」と、
町民が提訴した新校舎建設費差し止め訴訟は大津地裁が
平成15年11月、町が建設業者と交わした契約は適正でないと判断、
建設費の支払い差し止めを町に命じた。
町側は控訴したが、16年7月、大阪高裁は一審判決を支持し訴えを棄却。
「契約外と知りながらの建築で、(建設業者も)工事費は請求できない」
との判断を下していた。

最高裁で、町長の裁量権にまで踏み込む厳しい司法判断が確定したが、
被告の大野前町長は先月、町長を辞職。
今月行われた滋賀県議選に出馬し落選した。
町長代行の白方由美副町長は
「新町長(22日に選出)の問題で私に責任はない」と答えるのみで、
新校舎建設につぎ込まれた18億円
という巨額の税金支出の責任は宙に浮いたままだ。

首長の裁量権を問う行政訴訟では、
奈良県天理市の市有地転売訴訟で平成14年9月、
市長らに対し約12億5000万円の支払いを命じる判決や
一昨年9月、京都市の土地売買に絡む「ぽんぽん山」訴訟で、
市長に約26億円の支払いを命じる判決が最高裁で確定するなど、
ずさんな行政運営の責任を追及するケースが目立っている。

原告弁護団の吉原稔弁護士は
「支払われた建築費を業者に返還させるのは現実的に難しい。
町民が被った損失の責任は大野前町長が取るべきだ」と話し、
決着の場は6月、大津地裁で審理が始まる損賠訴訟へ移った。

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